「中小企業診断士がホームページ構築依頼を受けた際に忘れてはいけないこと」(1/6)

ホームページ構築

中小企業診断士を始めとする支援者が、中小企業事業者からがホームページ構築依頼を受けた際にまず行うべきことは何でしょう?

我々中小企業診断士の仕事の本質は「支援先企業の経営を良くすること」にあります。よって、ホームページ構築の依頼を受けても、まずは経営全体を見る「経営診断」からスタートすることが、欠かせない視点です。

これら中小企業経営者よりホームページの構築や改善を依頼された時に、中小企業診断士を始めとする支援者が忘れてはならないポイントを6回のシリーズで紹介していきます。

第1回では、ホームページ構築の依頼(相談)を受けたら考えることの全体像を紹介します。

ホームページ構築の依頼(相談)を受けたら考えること

中小企業経営者よりこのような依頼をうけたとき、あなたならどうしますか?

ITの専門家なら「ホームページ」なんていう言葉は古く「Webサイト」の方が一般的と言われるかもしれませんが、ここでは中小企業診断士向けということもあり、経営者にとって耳なじみの良い「ホームページ」という言葉を使います。

ターゲットを中小企業診断士としていますが、ITの専門家でも、マーケティング視点の部分だけは、読んでいただきたい内容となっています。

ホームページ構築依頼には、①新規構築 ②再構築 の二つがあると思います。

①は「新規事業を開始するのでホームページ作りたい」または、「今までホームページなしで事業を営んできたが必要性を感じたので作りたい」という依頼です。

②は「既にホームページがあるが、効果が上がるものに変更したい」依頼です。

中小企業の場合、ホームページにかける資金力が多くありませんので、公的機関に相談または補助金申請をし、公的補助が受けられたらやるというパターンが多いです。また、最近はデジタル化応援隊事業により、時給500円でIT専門家(サラリーマン兼業者含む)に支援依頼できるようになりました。デジタル化応援事業にもホームページ構築依頼が多くあります。

また、今はWordPressなど、プログラミングの知識がなくともホームページ構築ができるオープンリソースのソフトが沢山ありますので、技術的なハードルは下がり、ITの専門家でなくとも請け負うこともできます。 しかしながら、ホームページの総数が増えていますので、差別化や誘導を上手くしないと「見てもらえない」ホームページになってしまいます。

図表1.全世界におけるWebサイトの総数

出典:Internet live state
https://www.internetlivestats.com/total-number-of-websites/

中小企業経営者からは、「過去多額の費用を投じて専門業者にホームページを作ってもらったのに、成果があがらない」という声をいただくことが非常に多いです。その原因は経営者の「知識不足」「認識不足」もあるのですが、請負側にも「説明不足」「打合せ不足」があると捉えています。

ホームページ構築業者(いわゆるベンダー)の場合、「作業請負=報酬」であるため、打合せなど報酬が生じない仕事に生産性はないと判断し、割り切って切り捨てるのもやむを得ないところはあるでしょう。その結果、数少ない成功事例の影に、非常に多くの失敗事例が生じています。ホームページ構築業者に「作っても売れない」と文句をいったところで、契約作業は終了しているので、あとはメンテ契約に修正がどこまで含まれているか、なければ追加料金を払って修正する手もありますが、構築業者が音信不通になったなんて話も多く聞きます。

我々は、中小企業診断士ですので、仕事の本質は「経営を良くすること」にあります。よって、ホームページ構築のニーズを受けても、まずは経営全体を見る「経営診断」からスタートをお勧めします。依頼企業の窮境要因は何か、課題の解決手段はホームページしかないのか(他にもっと優先すべき課題はないのか)、ホームページを運用・管理できる人的リソースがあるのか、これらをよく見極めたうえで具体的実行支援に入ることが、結果的に成果の上がるホームページ構築支援につながると経営者に説明をしています。構築作業に入る前に、社長のITリテラシーに応じた丁寧なヒアリングと説明、明文化されたコミットメントが重要であると考えます。

下請中心で営業せずとも経営ができてきた企業の場合、そもそも新規顧客開拓の経験がなく、販売促進手段の検討もしたことがないという経営者もいらっしゃいます。その場合、マーケティングそのものをコンサルするところから始めないといけません。ここは、中小企業診断士の得意分野かと思います。 自社の商品やサービスの強み、弱みを知り、顧客ニーズや競合の動向を掴み、ターゲッティング・コンテンツ化・仕組み化など、ホームページ構築前にやるべきことは多数あります。ここではその内容を以下の順番でご説明していきます。

図表2.中小企業診断士がホームページ構築前にやるべきこと

さて、第1回は、ホームページ構築の依頼(相談)を受けたら考えることの概要を紹介しましました。次回、第2回では、「ステップ1:簡易な経営診断」、「ステップ2:経営者・担当者のWeb教育」の中身を紹介する予定ですので、ご期待ください。

伊藤由美子
神奈川県中小企業診断協会/マーケティング実践研究会