1.契約の成立は、既存顧客としてのお付き合いの始まり
営業マンにとって、契約が成立することは何よりの喜びだと思います。特にそれが新規顧客から獲得した契約であるならば、喜びはさらに大きなものになるでしょう。
一方で、はじめてあなたの会社の製品やサービス(以下「商品」といいます。)を購入した顧客は、これからその商品を利用してもらうユーザーとなりますが、初めて購入した商品に対しては不安や心配を抱えることも考えられます。
こうした不安や心配を取り除く対策を講じて、顧客がこの先もあなたの会社とお付き合いをしていこうと思っていただくためには、商品購入後のアフターフォローをしっかりと行うことが求められます。
具体的に顧客視点で考えると、以下の事項が挙げられます。
(1)商品はいつ届くのだろうか
基本的な事項になりますが、契約を取り交わす際に、納品時期をお伝えするとともに、顧客がいつでも思い出せるよう、後日メールやハガキなどでお伝えすることが良いと思います。また、その際に商品購入のお礼を付記しておくと良いでしょう。
(2)購入した商品で良かったのだろうか、うまく使っていくことができるのだろうか
顧客の商品に対する不安や心配への対策としては、納品後10日以内を目途に訪問することをお勧めします。何事もない場合でも様子を見に行くことで、顧客からは「気にかけてもらえている」という安心感を与えることになります。
(3)購入後の不具合などには対応してもらえるのだろうか
納品した商品に不具合などがあった場合には、すぐに対応することが必要です。不具合の中には、契約に含まれていない事項もあるかもしれませんが、そうしたことも含めて顧客に丁寧に説明していくことが求められます。
アフターフォローの内容には、営業マンだけでは対応できないものも含まれていると思います。そのためにも、契約が成立した際には、関連部署に新規顧客の情報を提供し、関連部署でもバックアップ体制がとれるよう、日頃から社内コミュニケーションを円滑にして、「個人」ではなく、「チーム」で対応できるようにしておくことが理想です。
2.アフターフォローで何ができるのか
アフターフォローの目的としては、次の2点が挙げられますが、目的を達成するには、顧客からの信頼を獲得していくことが必須であり、一朝一夕にはいきません。日々の積み重ねが必要になります。
(1)既存顧客との関係を深めて、優良顧客にすること(売り上げ拡大を狙う)
新規顧客から既存顧客に変わったのであれば、顧客にはあなたの会社の商品を継続して購入していってもらいたいものですね。
定期的に訪問や連絡をすることで、顧客もあなたの会社を認知することになりますので、アポイントも取りやすくなると思われます。また、ただ訪問をするのではなく、顧客の話を聞き、会話の中から顧客が抱えている課題を見つけ出し、情報提供や提案をしていくことで、次の契約へ導いていくことになります。
(2)既存顧客から顧客を紹介してもらう(見込み客の発掘)
あなたの会社の商品が、頻繁に購入されるものではない場合などは、新規顧客開拓をしていかなければなりません。そのような時に既存顧客から紹介をしてもらえるようであれば、営業活動が短縮されるとともに、最初から見込み客と商談ができる可能性が高まり、新たな顧客との関係を築くことができるかもしれません。
顧客との関係を維持していくためには、定期的な訪問や連絡は欠かすことができません。しかしながら、営業マン1人が1日で対応できる時間は限られていますから、優先順位をつけて顧客別に訪問の頻度を決め、訪問ができないときにはメールや電話で現況を伺うなどして関係性が途切れないように心がけてください。
3.Withコロナ時代のアフターフォローとは
既存顧客は貴社の商品をよく理解しているため、売上につながりやすいメリットがあります。コロナ禍により、リアルイベントの開催ができずに、新規顧客開拓が難しい今だからこそ、既存顧客へのアフターフォローをしっかり行い、リピートオーダーにつなげる努力が求められます。
工作機械や機械部品など生産財を例にあげれば、受注後の機器設置から稼働後のメンテナンスまで、その都度、的確なフォローが必要になる場合が多くあります。営業マンは、機器の納入時点で仕事が終わりと考えがちですが、お客様の仕事は、その時点が出発点なのです。
従来、アフターフォローについても対面での対応が必要だと言われていましたが、コロナ禍を契機としたオンラインツールの急速な普及と進歩によって、遠距離のお客様でも、移動時間をかけずに、こまめなフォローが可能になりました。適切なタイミングで、オンラインツールを使って、こまめにアフターフォローを行うことで、リピートオーダーの獲得率向上につなげて行きましょう!
なお、IT業界、特にSaaS(Software as a Service)販売会社を中心に、近年、アフターフォローの考え方を一歩進めた「カスタマーサクセス」という考え方が広まってきています。 カスタマーサクセスとは、直訳をすると「顧客の成功」という意味です。受動的に顧客の要望を満たすためだけのアフターフォローを行うのではなく、顧客の成功(=事業の成果)と自社の収益とを両立させる事を目指し、能動的に顧客に対して働きかけます。このカスタマーサクセスについては、また、別の機会で紹介いたします。