「中小企業診断士がホームページ構築依頼を受けた際に忘れてはいけないこと」(4/6)

中小企業経営者よりホームページの構築や改善を依頼された時に、中小企業診断士を始めとする支援者が忘れてはならないポイントを6回のシリーズで紹介しています。

前回、第3回では、経営者のITリテラシー、支援者自身のITスキルに照らして、案件対応の基本方針を決める「ステップ3:経営者のITリテラシー別、対応方針の決定」について紹介しました。今回、第4回では、ホームページをどんな人に見てもらいたいのか、見てもらうのにどういった工夫が必要なのか「ステップ4:ターゲット顧客の明確化」について紹介します。

中小企業診断士がホームページの構築、改善を依頼された時の対応

ステップ4:ターゲット顧客の明確化

ホームページ構築に入る前に、「ホームページをどんな人に見てもらいたいのか」、「見てもらうのにどういった工夫が必要か」、これらを経営者と十分話し合い、認識を共有する作業がとても重要です。

ステップ1の「簡易な経営診断」でも3C分析やSWOT分析程度は実施したと思いますが、それは総論の範囲です。ここでは各論に踏み込んで、自社の「強み」を「ネット上」の「見えない顧客」にどのようにアピールするかという作業までを指します。

自社の商品・サービスを必要としている顧客像の明確化

新規顧客がターゲットの場合は、提供している商品・サービスがニッチでない限り、自社の商品・サービスを必要としている顧客像を明確にして、サイトへの誘導手段も含め十分に擦り合わせしてからサイト構築を開始しないと、①出来上がっても支援先企業に気に入ってもらえない、②リリースしてもアクセスが増えず効果が上がらないなど、失敗する可能性が高いからです。

自社の商品やサービス・技術に自信を持っている経営者は「見てさえもらえれば買ってもらえる」と期待するかも知れませんが、取扱い商品が汎用品であり、かつ、商品写真そのものに「魅力ある」表現ができるならともかく、普通はそうではありません。

購入・決済まで行うECサイトにするか、Amazonや楽天などに出品しホームページではブランド構築と既存客向けに特化するなどの技術的な細部の話は後回しにする必要があります。まず、ターゲット顧客はどこにいるのか、どのようにアプローチし、どのように誘導するかのイメージまでを固める作業と捉えて下さい。

例えば、サービス業や受注型製造業などは、写真や文字を見ても購買意欲がわきにくいですよね。このような場合は「見える化」が必要です。「なんでもできます」は「なにができるかわからない」と見られますので「例えばこんなことができます」など、写真や映像をまじえてイメージ化しないと受注にはつながりません。

競合のホームページ分析

ターゲット顧客の分析に比べて、競合分析の方は比較的容易です。なぜならば、「ニッチ」、「新しい」、「ユニーク」なものは別として、大半の商品やサービスについては、ネット上で競合のホームページを多数見つけることが出来るからです。

経営者にマーケティングの知識がなく、顧客ターゲットや競合との差別化について意見がないようならば、一般的な分析手法(3C、4P、SWOTなど)を用いて最低限のマーケティング知識を持ってもらうようにしましょう。それでないと有効なコンテンツ作りの材料が得られない、ブログなど追加コンテンツが期待できない、ホームページを作ったが、集客できないといった結果につながりかねません。ホームページでの集客は期待せず、名刺やカタログ代わりを作るという依頼であれば、それでも良いかも知れませんが。

既存顧客をターゲットとする場合、顧客に伝えたい内容によってはホームページではなく、SNSで既存顧客とつながっておくだけで十分ということもあります。

どう考えても検索順位を上げることが難しい場合は、集客力のある業界サイトに有料で掲載することも検討しても良いかもしれません。

集客手段としてのメリットとデメリットの検討

ホームページ作成ありきではなく、集客手段としてのメリットとデメリットを十分に確認しましょう。他のweb販促も絡めないと、ホームページ単独での集客は、今の時代難しいです。成功事例の影に何十倍もの失敗事例もあります。大企業のように多額の費用を投じることも難しい中小企業としては、よほど上手くやらないといけません。他の販売促進手段も教示しながら十分検討しておくことが重要です。

こうして、ホームページが必要で、誘導手段もある程度のイメージが固まったら、初めて受注ができる段階になります。自分のITスキルを過信せず、サイト構築作業は信頼できるプロに外注し、コンサルに徹して監督に回る方法もあります。そのために、日頃より、腕のいい信頼できるプロと人脈を作っておくことも大事です。

意外に見落としやすい受発注の手段の検討

また、意外に見落としやすいのが、受注の手段です。「見てもらうこと」ばかりに注力し、せっかく興味を持ってもらっても、注文や問い合わせにつがらなければ意味がありません。問い合わせページにどのような項目が入れるか、問い合わせ先に電話番号を入れるならつながる番号か、つながらないならネット予約に誘導するかなども「顧客視点」と「従業員視点」どちらも合ったものにする必要があります。

実際にあるエステ業者の事例として、ホームページを作ったものの、問い合わせが少ないと相談を受けたので、拝見させていただいたところ、問い合わせフォームに多くの個人情報を必須で入力しなければならない仕様となっていました。そこで、質問項目を減らしただけで問い合わせが増えたことがありました。

一人企業によくあるパターンですが、ホームページの問い合わせ欄に電話番号しか書かれておらず、その電話はいつかけてもつながらず、留守電に入れても折り返しの連絡がないなんて事もありました。(留守電がつながるか否かは定期的に確認しましょう)

ホームページで注文を取る形とした場合は、注文に即座に対応しないと、既存顧客まで離反する羽目になることもあります。注文が請けられなくなったら注文停止の表示がすぐ出せるようにするなど、EC(イーコマース)導入に対する対応は、ホームページ上だけでなく内部体制も必要となります。

ある酒卸売業者の支援事例ですが、BtoBからBtoCへ転換を果たすべく、ホームページで注文が請けられるようにした結果、細々とした個別注文への対応に追われ、従業員の残業が増え、退職者が続出したなどという失敗例も見ました。少額の汎用品は、安ければホームページを通じた受注は十分可能となりますが、単品管理ができる体制が整っていない中で個別注文を受けられるようにしてしまうと、オペレーションが混乱し、売上以上に人件費が増加するという逆効果が生まれることがあることに注意が必要です。

このように顧客ターゲットを決める際は、受発注までの流れをスムーズにすることと、受発注に応じられる体制かどうかも確認しておく必要があります。

BtoBの場合は、顧客が「大手電機メーカーの技術者」など、かなり限定される業種もありますので、ホームページをカタログ代わりに作るのは良いですが、それだけでなくリアル営業も絡めて営業戦略を立てる必要があります。ただし、顧客ターゲットが絞れれば絞れるほど、ホームページのコンセプトや入れるべきキーワードは固めやすくなりますので、顧客ターゲットの設定は重要です。

さて、第4回では、ホームページをどんな人に見てもらいたいのか、見てもらうのにどういった工夫が必要なのか「ステップ4:ターゲット顧客の明確化」について紹介しました。第5回では、「ターゲット顧客が興味を引くようなホームページとはどんなものか」経営者とイメージを共有するための「ステップ5:目指すHPイメージを共有」を紹介しますので、ご期待ください。

伊藤由美子
神奈川県中小企業診断協会/マーケティング実践研究会