「中小企業診断士がホームページ構築依頼を受けた際に忘れてはいけないこと」(2/6)

ホームページ構築支援

中小企業経営者よりホームページの構築や改善を依頼された時に、中小企業診断士を始めとする支援者が忘れてはならないポイントを6回のシリーズで連載しています。

前回、第1回では、ホームページ構築の依頼(相談)を受けたら考えることの全体像を紹介しました。今回、第2回では、ホームページ作成支援を行うための作業に入る前に行うべき準備作業として、「ステップ1:簡易な経営診断」、「ステップ2:経営者・担当者のWeb活用教育」の2点の進め方を紹介します。

ステップ1:簡易な経営診断

ホームページ作成支援を行うための作業に入る前に、我々診断士が行っておく経営診断とはどの程度のものか? 経営診断は中小企業診断士の本業なので言うまでもなく、手法は色々あると思いますが、最低限以下の項目になると思います。

ここで注意すべきは、通常の経営診断と異なり、ヒアリングや分析に工数をかけすぎないこと、販路拡大や売上増加など、ある程度社長の中で課題は特定できての依頼である訳ですからそこからは外れずに、社長の認識と状況にズレが生じていないか、専門家としての知見や客観的情報を加えて確認し、ホームページ構築前に(または同時進行で)取り組むべき課題があるのかないのか、課題解決に取り組める人的・資金的リソ-スがあるかないかを確認する作業の一環と捉えてください。

図表3.簡易な経営診断の手順

経済産業省のホームページに掲載されている「生産性向上のためのチェックシート」を活用すると効率的なヒアリングができると思います。また、一般的な改善提案例も掲載されています。

「生産性向上のためのチェックシート」ー 経済産業省 サービス産業生産性向上ポータル

ここで重要なことは、アクションプランは個社の人的・資金的リソースを見て決める必要があるという部分です。

ステップ2:経営者・担当者のWeb活用教育

教育というと、講義でもするのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。経営者とのヒアリング・コーチング作業の中で行います。言葉で説明が難しい時は図で説明ができるよう、ノートパソコンやタブレットを持参すると良いと思います。経営者がホームページの再構築の必要性を感じた時が、学びの好機であるため、普段難しい言葉は聞く気になれない方でも、聞いてもらいやすいからです。

例えば、経営者に「ホームページを作って何を期待しますか」と聞くと「売上を上げたい」などの答えが返ってくると思います。しかしながら、今時ホームページはあるのが当たり前で、ただ作るだけでは、よほどニッチでない限りは、SEO対策に相当の費用か労力をかけないと、集客効果は上がらないことが多いということを、まず、最初に共通認識いただく必要があります。

中には、「事業所の場所を説明するのが面倒」「名刺代わりに」「銀行から言われたから」など、とりあえず何でもいいから作りたいというケースもあります。これなら、すぐに請け負って短時間で納品することは可能です。しかしながら、WordPressのようなオープンソフトウェアは更新や保守管理に労力や費用をかける気がない方にはお勧めしません。アップデートを怠りセキュリティに問題が生じる可能性があるからです。

また、更新のないホームページは不要な問い合わせやセールスの電話が増えるという弊害もあります。問い合わせに対応するコストもかかるなどもありますので、ニッチでもない限り、定期的な更新とコストをかける必要性をご理解いただいた上で、メンテナンス契約も検討した方が良いと思います。

また、ホームページ以外にどのようなWeb販促の手段があるか、お伝えしておく必要があります。その中の一つの手段としてホームページがあるという位置づけで話を進めて行くのが良いでしょう。ホームページ受注につながらなかったとしても、他の有効なWeb販促の提案ができれば一定の評価は得られるでしょう。

アカウント取得から登録運用までの一連の作業を請け負う受注もあるでしょう。ホームページを作るとしても他のWeb販促手段を併用することが重要です。

ネットに詳しくない社長には、リアルとネットを比較してこんな風に例えたりします。

図表4.リアルとネットの比較

リアル(コロナ前で有効)  ネット(withコロナで有効)
店舗や事務所ホームページ
エントランストップページ
DMメルマガ
電話SNS
コマーシャルYoutube
道路標示 地図Google Map マッピーなど

Web販促について、あまり詳しくない経営者には、マッチングサイトやSNSの活用について、一通りを説明してください。

マッチングサイトの活用

BtoCの例

ぐるなび(飲食業)、ホットペッパービューティー(美容業)、トラベルコ(宿泊業)など

BtoBの例

イプロス(製造業)、チラCEO(決裁者のためのアポ獲得サービス)、ジェグテック(経済産業省の機関)など

どのマッチングサイトが良いかはターゲットと業種により異なりますので、下記の様なマッチングサイトの比較をしている業者や同業者の意見を参考として、色々検討してみると良いでしょう。

【2020年版】ビジネスマッチングサイト17選とビジネスモデルを解説 ーWebFolio

ビッグアドバンスのホームページ作成サービスの活用

ビッグアドバンスとは、 地方銀行、信用金庫 などの地域金融機関が、顧客企業に提供するITサービスの一つで、月額3,300円で、加入者はホームページを最短15分で作れるツールが実装されています。ホームページだけでなく、ビジネスマッチングや福利厚生、チャットツールや安否確認サービスなどの様々なサービスが受けられます。

従って、ドメイン取得やレンタルサーバーにかかる費用、業者に保守管理を委託する費用をかけるくらいなら、 地方銀行、信用金庫と取引のある企業であれば、こちらを提案・検討してはいかがでしょう。

金融機関のAIを使った新サービス!~Big Advanceビジネスモデルとは

SNSの活用

Twitter、Instagram、Facebook、LINEなど皆さんお馴染みのSNSでも、企業としてのページを作ることにより、ホームページと似たような効果が得られることもあります。拡散力、顧客関係性の強化などにおいてはホームページより優秀な面もあります。口コミはコントロールが難しいため、ブランド力の維持・向上などの面ではリスクもありますが、ホームページも作り、ホームページに顧客を誘導する手段としても検討すべき項目だと思います。YouTubeも含めた様々なWebマーケティングミックスの手段を検討しておくことが重要だと思います。

企業の戦略・SNSマーケティング!その活用事例も紹介! (digitallab.jp)

さて、第2回では、ホームページ作成支援を行うための作業に入る前に行うべき準備作業として、「ステップ1:簡易な経営診断」、「ステップ2:経営者へのITリテラシー教育」の2点の進め方を紹介しました。次回、第3回では、「ステップ3:経営者のITリテラシー別、対応方針の決定」について紹介する予定ですので、ご期待ください。

伊藤由美子
神奈川県中小企業診断協会/マーケティング実践研究会