「中小企業診断士がホームページ構築依頼を受けた際に忘れてはいけないこと」(5/6)

中小企業経営者よりホームページの構築や改善を依頼された時に、中小企業診断士を始めとする支援者が忘れてはならないポイントを6回のシリーズで紹介しています。

前回、第4回では、ホームページをどんな人に見てもらいたいのか、見てもらうのにどういった工夫が必要なのか「ステップ4:ターゲット顧客の明確化」について紹介しました。今回、第5回では、「ターゲット顧客が興味を引くようなホームページとはどんなものか」経営者とイメージを共有するための「ステップ5:目指すHPイメージを共有」について紹介します。

図.ホームページ構築前にやるべきこと(6つのステップ)

ステップ5:目指すHPイメージを共有

経営者と目指すHPイメージを共有する

ターゲットとしたい顧客像が明確になったら、その顧客の興味を引くようなホームページとはどんなものか、経営者と十分に話し合い、ゴールを明確にしましょう。頑張っている競合のホームページから良い例を探して真似をするのは容易です。経営者が気に入った競合のホームページのイメージを真似て構築するのは、効率が良いのですが、本来の目的であるターゲット顧客に見てもらえなければ、自己満足に終わってしまいます。

上手いやり方をして集客に成功している例も一部にはありますが、殆どはそうではありません。特に販路開拓を目的とする場合、難易度が上がります。既存顧客と同じような会社または個人がターゲットであれば、既存顧客に意見を聴くなどして成功の可能性を高めることができます。一方で、新規顧客をターゲットとする場合は、想像力を働かせてチャレンジ的な取り組みをし、試行錯誤を繰り返し、効果が出るまで頑張って改良を続けてもらえるかが、成功のためのポイントとなります。

既存顧客と新規顧客が全く異なる属性・価値観であるのに、一つのホームページで対応しようとすると、どっちつかずになってしまう可能性があります。その場合、既存顧客はホームページではなくSNSなど別の手段で囲い込み、新規顧客のみにターゲットを絞ってデザイン・構築をした方が良いでしょう。

経営者より「きれいな~」「カッコ良い~」「センスの良い~」ホームページという要望を受けても、その通り作ろうとすることが最善とは限りません。

例えば、アパレル業界であれば「ダサイ」は致命的かもしれませんが、競合もみな「きれいな」「かっこよい」サイトを作っている中で、自社の差別化要素は何なのか、ターゲット顧客が興味をそそるコンセプトとは何なのか、経営者と十分に話し合ってから方向性を決めることが、成果が上がるホームページとするのに必要な作業です。

ユニークな商品、親近感が感じられるサービスなどを志向する場合、あえて「ダサイ」けれども「面白い」サイトを目指す戦略もあります。

ホームページの構築に従業員も巻き込む

そして、可能であればホームページの構築は従業員を巻き込んだプロジェクトで進めて行くことを提案したいです。

自社のホームページに従業員がどれだけの関心を持てるかが、これから説明するSEO対策において重要であるからです。

また、ホームページの構築作業を経営者と従業員の共同作業とすることができれば、社内の一体感を高まり、従業員のモチベーションアップにもつながる可能性があります。販売面だけでなく、組織の活性化や人材育成(インターナルマーケティング)への活用も検討したいところです。ホームページ上で、自社が顧客に約束したメッセージを、従業員が十分に理解し、個々に体現できるようになることができれば理想的です。

また、ホームページを通じて従業員の生き生きと働く姿を公開していくことで、ホームページの「ライブ感」が生まれます。生きたホームページはファンを作ることができ、ファンができれば商品やサービスの付加価値が高まります。中小企業の悩みの上位にある人材確保の面でも、課題解決に資する可能性があります。

中小企業診断士としてケアすべきこと

外部の中小企業診断士にとって、従業員の啓蒙までは、荷が重いと感じられるかもしれませんが、外部の人間だからこそ、その会社の良い部分が分かりますし、経営者が照れくさくて言えないことも言える立場にあると思います。

従業員から写真やコンテンツの提供がスムーズに行われるようであれば問題ないですが、そこが上手くいっていない会社は、従業員にとってホームページが「他人事」になっているか、業務が多忙すぎて新規顧客開拓どころでない可能性があります。そのような会社はホームページで何をやっても上手くいかないことが多いです。従業員に構築を手伝ってもらうことが難しければ、せめて従業員に、作成中のホームページのデモを見てもらって意見を聴くなどして、目指すホームページの方向性を共有化できるよう目指したいところです。

さて、第5回では、経営者や従業員とホームページの目的やゴールイメージを共有するための「ステップ5:目指すHPイメージを共有」について紹介しました。最終回となる第6回では、Googleなどの検索エンジンで上位になるための「ステップ6:HPの集客向上策の協議」について紹介しますので、ご期待ください。

伊藤由美子
神奈川県中小企業診断協会/マーケティング実践研究会