中小企業経営者よりホームページの構築や改善を依頼された時に、中小企業診断士を始めとする支援者が忘れてはならないポイントを6回のシリーズで紹介しています。
前回、「ターゲット顧客が興味を引くようなホームページとはどんなものか」経営者とイメージを共有するための「ステップ5:目指すHPイメージを共有」について紹介しました。最終回となる第6回では、「ステップ6:HPの集客向上策の協議」と題して、検索サイト経由で自社のホームページに集客するために、経営者や担当者と詰めるべき内容について紹介します。
ステップ6:HPの集客向上策の協議
SEO (Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策とは、自身の Webページを関連する検索ワードで検索結果に上位表示させて、検索者にページを見つけてもらう機会を増やすための施策です。
検索サイトに多額の広告費用を支払って検索ページの上位を保つ方法は、資金力の乏しい中小企業には難しいので、創業時や閑散期のキャンペーン時など、限定的に用いた方が良いでしょう。
無料でできる検索エンジン最適化の対策として、内部対策と外部対策があります。
内部対策とは、ターゲット顧客が必要とする商品やサービスの検索時に入力すると思われるキーワード選び、ホームページ内部に入れ込んでおく方法が一般的です。魅力的なサイトやコンテンツを作り多くの人に見てもらうことで、検索順位は上がります。これを「コンテンツSEO」「コンテンツマーケティング」と呼びます。検索上位にならないとホームページへのアクセス数は増えず、アクセスがないと検索順位が下がるという悪循環になります。どんなに素晴らしい内容のホームページを作っても(店舗で言えば内装が立派でも)、検索順位が低い(店舗で言えば立地が悪い)と、顧客が見に来ないということになります。
外部対策とは、自社のホームページを支持してくれた人に、別のサイト等でリンクを貼ってもらえることです。取引先のホームページに相互リンクを貼ってもらったり、SNSへの投稿で取り上げて貰ったり、既存顧客やインフルエンサーにネット上の口コミをお願いしたりなど、様々な方法があります。しかしながら、他者をコントロールすることは難しいため、基本的にはSEO対策は内部対策が中心となります。
SEO対策の方法についてわかりやすく説明しているサイトは多くありますので、よく読んで経営者に説明できるようにしておきましょう。(詳細は下記を参照)
そして、このSEO対策について、経営者(または実施担当者)に協力してもらえるよう依頼し、了承を得ておくことが重要です。
【SEO対策とは】2021年版 上位表示するための5つの方法|初心者にもわかりやすく基本から事例まで解説 | 大阪 バリューエージェント (valueagent.co.jp)
ホームページのイメージが固まって制作に進む際のポイント
ここまで固まって、ホームページの制作を始めることができるようになります。
ホームページの制作時に、詰めていくべきは以下の項目となります。
- ページ数(トップページ゙・会社概要・商品・アクセス・問い合わせ・ブログ)
- 動画を入れるか、静止画のみとするか(誰が何をいつまでに準備するか)
- 拡張機能
- ソフトの種類(Wixなどの簡易ソフトかWordPressなどのCMSか)
- レンタルサーバーの種類
- スマホ対応有無
- 多言語化対応有無など
他社のホームページ例を見せて「このサイトはこういう機能を持っています」、「これをやる場合これくらいの追加の費用と労力が(構築時・メンテナンス時)にかかります」、「こういう機能があるとこういう効果が期待できます」など、デモを見て頂きながら分かり易く説明し、コミットメントを取ります。
そして、最終的には仕様書に落とし、後日ホームページのメンテナンスがしやすいように共有しておきましょう。この仕様書がホームページの設計図となります。要件定義や契約書には細かい内容まで記載しないことが多いため、しっかりと記録して共有しておかないと、後から「こういう機能も追加してほしい」「ここまでやってくれると聞いた気がする」など言って追加作業が次々と加わり、「いつまで経っても作業が完了しない」という悪循環に陥ることがあります。
中小企業デジタル化応援隊事業やミラサポ専門家派遣のスキームを用いて支援する場合は、作業時間に応じて謝金が支払われますが、基本的にはコンサル費用を補助する事業であり、請負は対象外となります。請負の場合は、経営者のOKが出て納品・実装するまでが仕事となりますので、どこまでを契約料金内の作業として、どこからが追加料金が発生するかを予めコミットメントしてからスタートした方が、追加に次ぐ追加で赤字作業となる可能性が抑えられます。
また、ホームページ構築後のコンテンツ追加やメンテナンス作業は誰がやるのかもしっかりと決めておく必要があります。多くの経営者がランニングコストを想定していないケースが多く、レンタルサーバーの費用などは明確にお伝えしておくことが大事です。
繰り返しになりますが、集客効果の高いホームページとするには経営者及び従業員の協力が不可欠であり、ホームページが出来た後も、コンテンツの追加と、成果確認のPDCAを回していくことが重要です。このことについて、しっかりとコミットメントを取ることがとても重要です。
PDCAを定着させるためには、ホームページ構築後も定期的に経営者との面談を行うことをお勧めします。アクセス分析の結果をもとに、「こうしたら良いか、ああしたら良いか」など、ホームページ充実に向けた話し合いをすることで、ホームページへの「アクセス数」が増えることが「やりがい」につながっていくことが、望ましい姿です。
最後に
ホームページの構築や改善について相談を受けた際、作業開始前に検討しておくべき事項は多くあります。
これらの準備作業をしっかりと行えることが、ただの請負業者と、中小企業診断士との価値の差であると認識し、このテーマを取り上げました。
一見遠回りに見えますが、トラブルを回避し、成果の上がる仕事を積み重ねることが、持続可能な顧客関係の構築に繫がり、公的機関や金融機関、士業団体などから、繰り返しオファーが来る中小企業診断士となる条件であると思います。
売れるホームページを作ることは簡単ではありませんが、当たれば成果は大きく、やりがいのある仕事ですので、経営者と共に楽しんで取り組んでいけたら良いことと思います。
伊藤由美子
神奈川県中小企業診断協会/マーケティング実践研究会