9月28日に開催されたマーケティング実践研究会では、デザイン思考講座第1回「デザイン思考で企業のイノベーションを起こそう!」をテーマにプロジェクトがスタートしました。研究会開催に先立ち、代表の小泉氏にプロジェクトの背景や、その熱い想いについてお話を伺いました。
開催日時
2024年 9月28日(土) 14:00-17:00
実施方法
リアルのみ (かながわ労働プラザ)
スタンフォード式デザイン思考を実践!
―一昨年のインタビューでは、マーケティングを学ぶだけでなく、実践の場として研鑽することに重きを置いているとお伺いしました。(https://mktlabo.com/interview-masa)今回、新たにデザイン思考を実践的に企業サポートに活用する取り組みを始められるとのことですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか?
まずはこのプロジェクトを成功させたいです(笑)。
MIT(マサチューセッツ工科大学)の講座でデザイン思考を学び、実践も行ってきました。しかし、実際にデザイン思考を日本の中小企業に活用した事例はまだ少ない。ですので、お客様に納得していただける形で成果を出せるか不安もあります。そのため、今回は確実にやり遂げたいと思っています。
成功したら、ぜひ価値づくりでお困りの中小企業に広めていきたいです。
今回は、中小企業にとって影響力のある企業様と一緒に取り組んでいます。その先には、価値づくりでお困りの中小企業が多く存在します。今回のプロジェクトを成功させ、その成果をもとに、次のそんな中小企業と一緒に活動していけるようにしたいと考えています。
また、今回のプロジェクトはチャレンジも数多くありますが、幸いにも社長が柔軟で楽しい方々なので、一緒にチャレンジに取り組んでいます。
今後は、プロジェクトの成果を広く発信し、イノベーションでお困りの中小企業様とつながる目指しています。マーケティング支援の実績を積み重ね、会員の自信にも繋がるようなプロセスを築いていきたいと考えています。
―新たなチャレンジをなさっているのですね!
大企業に勤めながら、コンサルタントになりたいという強い意志を持っている中小企業診断士は多くいます。彼らは勉強もしっかりしていて、コミュニケーション能力も高い。しかし、あと一歩がなかなか踏み出せず不安や恐れを抱えていることもあります。今回のプロジェクトを通して、そういった中小企業診断士を後押しし、一緒にチャレンジしていきたいと思っています。
この2~3年、マーケティングは大変革!制約の枠を超えたチャレンジ!
この2~3年で、マーケティングは大きな変革の時代を迎えました。制約の枠を越えた挑戦が求められています。実際、今回のプロジェクトに関しては、会員の皆さんも不安を感じているかもしれません。まだ具体的な方向性が明確になっていないため、進めながら柔軟に調整する必要があります。そのプロセスもまた、挑戦を続ける上で欠かせない要素だと考えています。
―なぜそのように感じているのでしょうか?
それは、社会全体が劇的に変化しているからです。
1つ目は、デジタルの急速な発展です。
デジタルの急速な進展とともに、リアル中心からデジタル中心になってきました。具体的には、購買の際にネットで見つけられないお店は、存在しないも同然のような状態になりました。いわゆる、アフターデジタルの時代が実現したのです。
2つ目は、企業が提供する価値の中で「共感」が非常に重要になったことです。
今はコモディティ化が進み、同じような商品・サービスが、同じような価格で、ネット上に溢れています。そうなると、購買の決め手は「好きか嫌いか」「愛着を感じるかどうか」といった感情的な要素が大きな影響を持つようになってきました。
―消費行動が変化している背景には、経済的な豊かさが関係しているのでしょうか?
例えば、海外旅行に行く人の数は(日本では)大幅に減少しています。コロナ終息後の現在は、パスポートを持っている人の割合は17%にまで下がり、留学者も激減しています。旅行の側面一つをとっても、消費行動そのものが大きく変わっていると感じます。
―消費行動が変わるということは、生活そのものが変わるということですね。
そうですね。
となると、従来のマーケティングの考え方も再定義しないと、全く機能しなくなってきます。しかも、今は答えがない時代ですから、実験的に手探りで進めていく必要があります。決められたフレームワークに当てはめるのではなく、トライして、ダメなら次へというサイクルで進めていかないといけないと感じています。大手企業があっても、戦略を持ってトライし続けることで、どこかで状況が覆る可能性があり、そのサイクルは以前よりも早くなっていると考えています。
―数の上では不利な中小企業こそ、より一層スピーディーにサイクルを回してトライしていく必要があるということですね。
中小企業をサポートする中小企業診断士は、資金繰りや業務改善も必要ですが、やはり売上を上げることを常に考えなければなりません。しかし、それには決まった答えがないので、とにかくトライしていくしかないんです。その試行錯誤を、私たちも一緒に走りながらサポートしていきたいと考えています。
“コドモになる”が得られる!
―今回のデザイン思考講座、第一回目から参加できなかった人も途中から参加して大丈夫でしょうか?
もちろん大丈夫です!
デザイン思考講座は、書籍に沿って進行していきますし、ワークショップ形式で進めるので、途中から参加しても問題なく実践できます。
―この書籍を採用した決め手は何だったのでしょう?
実は、かなりハードなMITの授業を受けたことがきっかけです。授業はすべて英語で専門的な内容でしあ。それをどう自分の実践に落とし込むか悩んでいた時に、Amazonでベストセラーだった『実践 スタンフォード式 デザイン思考』に出会いました。タイミング良くある学校で学生に教える機会があったので、この書籍を使ってみたんです。そうしたら、3ヶ月後には学生たちから色々なアイデアが出始めた。これなら中小企業向けでも絶対できる!と確信しました。
―デザイン思考を学ぶと、どのようなことが得られますか?
ズバリ“子どもになれる”ことですね!つい、大人になると偉そうなことを言いがちです(笑) 大事なのはお客様の立場に立って、純粋な目で物事を見ること。まさに、子供のような気持ちで接することを実践してもらいたいと考えています。
―それはお客様に“共感”することに繋がるということですね。
そうです。マーケティングで大事なのは、『従業員に共感』することでもなく、『お客様の言いなり』になることでもない、『お客様に本当に共感する』ことが重要なんです。この共感を製品やサービスの企画開発に活かせる人が少ないのが課題だと思います。お客様の体験を最初から最後まで本気で考え、期待していた以上だった!という結果を目指していく。それがデザイン思考の強みです。お客様の真のニーズをとらえることで『実はこうしたいのではないですか?』と自然に提案できるのが、この手法の凄いところですね。
大企業で勤める利点を生かす!
―中小企業診断士の強みは、客観的な視点とデータの取り方が上手、ということでしょうか?たとえば競合他社の情報をよく知っている、など・・・。
中小企業診断士の強みは、客観的な視点やデータ分析が上手いこと、と言われますが、実際にはそれが完璧にできている人は少ないですね(笑)
データの取り方は難しいです。でも、大企業にいることは大きなメリットです。社内に様々な専門部署のプロがいるので、すぐに情報を得られる環境があります。これは中小企業にはない強みだと思います。
そうした人たちが理論にとらわれず、自由に実践できる場を作りたいという思いで、マーケティング“実践”研究会を始めました。
―ありがとうございました!
例会では、デザイン思考の利点に関する説明や、プロジェクトのひとつとしてご協力いただいているProPadel Japan株式会社 松島直史氏による 「新しいスポーツパデルを体験しよう!」の講義がありました。初めての参加者や新入会員は、各プロジェクトチームに参画し、デザイン思考によるセッションが行われました。
5つのプロジェクトチームは
ブランドチーム(株式会社和える):日本の伝統工芸の価値を生かした新たな事業として、企業向け研修サービス事業の企画開発を行う。
新事業開発チーム(つくばの湯アーバンホテル):ホテル評価の鍵となる朝食体験に着目して、茨城県宿泊施設で朝食No.1を目指す取組を行う。
情報発信チーム(物流支援企業シクミオ株式会社):社会課題解決型新事業『1piece for 2PEACE.』クッキーの収益化を、デジタルを活用したストーリー発信として行う。
売上拡大チーム(電気製造業):太陽光発電のコア技術をもとに、未来の社会を見据えた新たなモビリティ事業を企画する。
スポーツチーム(ProPadel Japan株式会社):新興スポーツパデルの売上拡大策企画として、新たなスポーツ「パデル」の価値を広めるマーケティング企画立案を行う。
デザイン思考に沿った5つのステップについて説明がありました。
STEP.1 お客様と共感する(ユーザー理解)
STEP.2 問題を定義する(特に大切なことに潜在ニーズ(お客様が口には出さないけれどなんとなくある欲望)を露出させること)
STEP.3 アイデアを数多く出す
STEP.4 プロトタイプをつくる(3つくらいに絞る)
STEP.5 検証する
『1お客様と共感する』について、どのような人にインタビューを行えばその答え合わせと知らないことが解決できるのか、各プロジェクトチームで策定しました。
今回は、『2問題定義』のインタビューへ繋げるため、お客様目線に立った“変えたいこと、不便に感じたこと”を起点として、新たにチャレンジしたいこと、知っていることと知らないことなどに分類し発表しました。
確実にやり切る!
トライ&トライで走ったあとに見える景色は、はたしてどんな色なんでしょうかー
第二回目の講座も、ますます楽しみですね!
(文:伊藤晶美)