2025-1-25 定例会報告

1月25日の定例会では、デザイン思考講座の第5回目として、施策の効果を科学的に測定するためのRCT(ランダム化比較試験)の検討を行いました。実験では、マーケティング施策を統制群と処置群に分けて、統制群には施策を適用せず、処置群には適用します。この方法により、施策の因果関係を明確にし、効果を正確に測定できます。対象を無作為に分け、結果を比較することで、データドリブンな意思決定が可能になります。参加者はチームに分かれ、テーマごとに統制群と処置群を、顧客視点を重視した柔軟な発想で取り組むことを目指しました。

1.実施概要

開催日時

2025年 1月25日(土) 14:00-17:00

実施方法

リアルのみ (関内)

2.実施概要

「デザイン思考講座・演習4(プロトタイプをつくる)」(小泉 昌紀 代表)

1つ目の演習:構造モデリング(SEM)

Study 1では、日本のコーヒー市場を対象に、消費者ロイヤルティの要因を分析した事例を紹介しました。調査の結果、ブランド、商品品質、販売チャネルの3要因がロイヤルティに正の影響を与える一方で、エシカル要因(環境配慮や社会的責任)は負の影響を及ぼすことが判明しました。この結果は、消費者が「エシカル商品を支持する」と表明しながらも、実際の購買行動に結びつかない「態度−行動の乖離」を示しています。特に、エシカル商品の便益が具体的に伝わっていないことが課題として浮き彫りになりました。

演習では、この事例を参考にしながら、各班が因子構造を設計し、消費者行動を改善する具体的なポイントを議論しました。

2つ目の演習:ランダム化比較試験(RCT)

Study 2では、エシカル商品の価値を効果的に伝える方法を検証するため、ランダム化比較試験(RCT)の事例を紹介しました。この事例では、労働条件の良さや環境配慮など7つの処置群について商品魅力に与える影響を比較する実験結果が示されました。

演習では、この事例を参考にしながら、各班が「統制群」と「処置群」のクリエイティブを設計し、エシカル商品の価値を具体的に伝えるための方法を議論しました。

2. 各チームの活動

ブランドチーム(株式会社和える)

 「日本の伝統を次世代につなぐ」を強みとして、多岐にわたる事業を展開する株式会社和える様の『教育事業の売上拡大』を支援しています。

他の研修業との違い・アエル事業の独自性を考え今後、どう研修を獲得していくか

メンバーで意見を出し合い方向性を定めました。

 今回の定例会では、あえる様の研修事業について統制群と処置群を考えました。

新事業開発チーム(Aホテル)

デザイン思考の講義に基づいてワークショップを行いました。
当日は、マーケティング実践研究会代表が講師を務める大学の大学生及び代表所属企業のsyピンオフ企業の代表にもワークショップに参画いただき、幅広い年代を網羅した検討を行いました。

統制群と処置群は下記のとおりです。

これに基づいて処置群をよりビジュアライズしたPoCを作成の上、他チームからのフィードバックを受けました(PoCの掲載は省略)。
今後、検証内容に基づいて内容の深掘りを進めます。

情報発信チーム(社会課題解決型新事業『1piece for 2PEACE』)

物流企画会社S社の新規事業として、障がい者就労支援施設で製造されたクッキーを企業内で販売し、売上の一部を生活困窮者に寄付するモデル構築を支援している。この取り組みは、企業のCSR活動を通じて従業員が日常的に社会貢献活動に参加できる機会を提供することを目的としている。  

本サービスのコンセプトは次のとおりである。まず、企業側のCSR担当者には、従業員参加型の社会貢献を実現するパッケージを提供し、企業のブランド価値向上を図る。一方、クッキー購入者には、美味しい商品を楽しみながら気軽に社会貢献活動に参加できる満足感を提供する。また、購入の結果が障がい者や生活困窮者支援につながる仕組みが特徴である。  

加藤講師は、企業の活動が「グリーンウォッシュ」と見なされないよう注意し、CSR活動が企業の課題解決に直結する動機づけが重要であると指摘した。今後、企業が抱える課題の解消を視野に入れ、より実効性のあるビジネスモデルの構築が期待される。 

売上拡大チーム(未来の社会を見据えた新たなモビリティ事業企画)

 本業が看板製作で、太陽光発電による常夜灯を作成している関係先企業S社の小型EV車(NINA)の用途、販売先等を拡大していくべく、プロジェクトを行っています。

 今回のランダム化比較試験で統制群と処置群を設定する前段階において「70歳以上の高齢者」の「お出かけのしやすさ」について、「コスト」「利便性」に分解し、さらに番外として「ライフライン(電気)」を加えてロジックツリーを作成しました。

 その上で、ランダム化試験について、安全面、利便性、コストの課題がある「統制群(NINAのない生活)」、及び高い安全性と利便性、低コストの移動の実現に加えて、災害時等の電源が期待される「処置群(NINAのある生活)」を設定しました。

スポーツマーケチーム(ProPadel Japan株式会社様とパデルを盛り上げる)

ProPadel Japan株式会社様と共に、世界規模で急成長するスポーツ「パデル」を国内でも盛り上げるため、認知度・利用人口増加、神奈川県のパデルコート増設をミッションに活動しています。

今回は会社員が仕事帰りに「気晴らしに参加する」ケースを想定し、参加意向に影響を与える差別化要因を仮定してランダム化比較試験のシミュレーションを実施しました。まず、参加意向に影響を与える要因として①気軽さ、②おしゃれ、③リフレッシュ、④社交・コミュニケーションを選定しました。そこから、パデルが他のアクティビティとの差別化要因になり得ると考えた「ルールが簡単」「飲食しながら遊べる」「人との新たな出会い」を処置群に設定し、これらを強調することで統制群と比較して対象の参加意向が高まると仮定しました。

3.最後に

当研究会では、新入会員に対して積極的に発表や活動の機会を得てもらおうというスタンスで運営されています。また、研究会内各チームの活動についてもそれぞれのテーマに真剣に取り組んでおり、中小企業にとって必要な支援策を生み出そうという気概に溢れた仲間が集まっています。ご興味を持たれた方は、ぜひ一度体験見学会にご参加ください。

(以上)